令和6年第1回行方市議会定例会施政方針
初めに、去る1月1日に発生いたしました「令和6年能登半島地震」により、お亡くなりになられた方の御冥福を謹んでお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。
このたびの地震では、能登半島を中心に多くの建物が倒壊し、また、大津波や大規模火災が発生するなど、甚大な被害に見舞われました。
能登半島では今もなお、主要な道路が被害を受け、通行止めや規制が続いており、被害の全容が捉えきれておらず、復旧の見通しも立たたない状況が続いています。
このような状況を受け、本市では、特に甚大な被害に見舞われた石川県七尾市、輪島市及び珠洲市のふるさと応援寄附金の代理寄附受付を行い、被災された自治体の事務負担を軽減し、災害対応を優先できるような支援を行っています。寄附の受付状況ですが、これまでに3市合計で1,399件、3,018万9千円を受け付けています。引き続き、3月31日まで代理受付を行った後、皆様からお寄せいただいた寄附金は、被災された自治体へ迅速にお届けしてまいります。
また、本市では、茨城県と連携し、現地での避難所運営や罹災証明書発行等の支援業務に当たるための職員派遣を実施しているほか、避難生活の長期化が想定されることから、被災された自治体からの要望に即時に対応できるよう、支援体制を整えているところです。
市民の皆様におかれましては、東日本大震災での教訓を生かし、いざという時の備えと、日常生活における防災意識や防災行動力の向上に努めていただきますようお願いいたします。本市といたしましても、消防団を始めとする関係団体・機関との連携を図り、切迫する災害への危機意識を共有しながら、市民の皆様の安全と安心の確保と災害レジリエンスの強化に努めてまいります。
昨年は、新型コロナウイルス感染症の感染法上の位置付けが5類感染症に移行されたことに伴い、コロナ禍以前の日常や賑わいが少しずつ取り戻された1年でありました。
本市におきましても、「なめがた秋祭り」を始めとする各種イベントや行事が通常開催されたほか、市内の観光拠点にも多くの行楽客が訪れるなど、4年ぶりに地域が活気で溢れる様子を目にすることができました。コロナ禍から脱却する一方で、流行の第10波とも言える感染の再拡大も見られていることから、引き続き、ワクチン接種や基本的な感染症対策など、感染防止の徹底を図っていくことが社会経済活動を停滞させないためにも重要になってまいります。
総務省が発表した令和5年の全国消費者物価指数の平均は、前年比3.1%と、2年連続で上昇となりました。このような中、本市では、国の交付金を有効に活用しながら、低所得世帯への給付金の給付や、保護者の負担軽減を図るための学校給食の食材料費の支援など、物価上昇の影響を強く受けている方々への生活者支援、また、市内医療機関や介護保険事業所、障害福祉サービス事業所、商工業者など、地域経済を支えていただいている事業者への支援を進めてまいりました。
また、昨年の夏は、全国各地で35度を超える猛暑日が続き、本市におきましても、連日、熱中症への注意喚起を行う日が続きました。近年のこうした異常気象をもたらす背景には、温室効果ガス排出量の増加に伴う地球温暖化が原因の一つであると考えられており、現在、温室効果ガスの排出量の削減に向けた取組が日本のみならず、世界中で講じられています。地球温暖化の進行を放置することは、本市におきましても、自然災害や健康被害、農作物への被害など、市民の生命・財産への影響が懸念されることから、地域脱炭素社会の形成に向けた取組を進めているところです。
令和6年度の地方財政対策でありますが、社会保障関係費や人件費の増加が見込まれる中、国では、地方が住民のニーズに的確に応えつつ、人口減少やこども・子育て政策の強化など、地方が直面している様々な行政課題に対応し、必要な行政サービスを安定的に提供できるよう、地方一般財源総額を、前年度比6,445億円増の65兆6,980億円を確保しています。地方一般財源総額及び地方交付税については、定額減税による減収懸念を払拭すべく、前年度を上回る額が確保されました。
それでは、令和6年度の予算及び施政に関する基本的な考え方を申し上げます。
令和6年度当初予算は、本市の財政状況を勘案しながら、将来にわたり持続可能な財政基盤の確立を図るため、徹底した既存事業の検証・評価を行った上で、真に必要な事業が効果的に実行できるよう予算を配分し、編成しました。
一般会計当初予算の総額は、前年度比プラス6.8%の191億円となりました。また、国民健康保険、介護保険及び後期高齢者医療を合わせた特別会計は、前年度比プラス1.9%の92億5,150万円、また、水道事業及び下水道事業の企業会計は、前年度比マイナス10.8%の29億2,994万3千円となりました。
全会計を合わせますと、前年度比プラス3.4%、10億3,749万3千円増の312億8,144万3千円を計上しています。
今後、老朽化が進む公共構造物の整備更新費用による歳出の増加に加え、長引く原油価格・物価高騰に伴う燃料費、光熱費などの経常経費の増加が見込まれることから、引き続き、持続可能な行政経営を行うために、国や県の予算編成の動向を注視しながら、過疎対策事業債などの有利な起債を最大限に活用するとともに、ふるさと応援寄附金などの自主財源の確保に努め、身の丈にあった財政運営を行ってまいります。
なお、「ふるさと応援寄附金」は、令和5年12月末時点の寄附受入額が、過去最高の約8億円、鹿島アントラーズとのクラウドファンディングを含めますと、9億円を超える実績を挙げています。これは、参加事業者の新規開拓、本市特産品のブランディングによる商品価値の向上、また、6次産業化等による新たな返礼品の効果的なプロモーションによるものと考えています。今後とも、ふるさと納税を「本市の魅力を全国にPRする手段」として捉え、引き続き、ふるさと納税の推進を図るとともに、本市を応援してくださる寄附者の意向に沿いながら、市民の日常生活に資する事業に活用してまいります。
次に、令和6年度における重点施策について申し上げます。
初めに、「子育てするなら なめがた」への取組についてです。
現在、全国的に少子化が進行しており、社会保障費や地域コミュニティの維持に関わるとして、本市においても喫緊に取り組まなければならない大きな課題として直面しておりますが、少子化を反転させることは、人口減少を克服する上で非常に重要であるため、これまで以上に子ども・子育て施策を加速させてまいります。
結婚、妊娠・出産、子育ては個人の自由な意思決定に基づくものであって、これらについては多様な価値観・考え方が尊重されるべきであることは大前提であります。その上で、特に、若い世代の誰もが、結婚や、子どもを産み、育てたいとの希望が叶えられるよう、また、将来に明るい希望をもてる地域社会をつくらない限り、少子化に歯止めはかかりません。
そこで、全ての子ども・子育て世帯のライフステージに応じて切れ目のなく支援し、妊娠期から子育て期の包括的な相談支援体制を構築するため、令和6年度から「こども家庭センター」を設置し、妊産婦や0歳~18歳未満のすべての子どもと、その家庭等の相談・支援に取り組んでまいります。また、これまで実施してきた「子育て応援ニコニコ支援事業」や「誕生祝金」、「不妊・不育症治療費補助」といった事業を継続するとともに、新たな子育て支援策として、保育所等に通園する園児の給食費に、ふるさと応援寄附金の一部を充てることで、児童1人につき、1月当たり1,000円の助成を行ってまいります。また、子育て世帯へのアンケートで需要の高かった公園遊具の整備等も進めてまいります。
子どもの健やかな成長の上で、「子育て」と合わせて重要となる「教育」では、各学校におけるICT教育環境の整備を進めるとともに、外国人講師とのオンライン会話や体験型英語学習の推進、中学生の海外派遣研修の再開など、英語を用いてコミュニケーションを図る機会を積極的に創出することで、児童生徒の実践的な英語能力の更なる育成を図ってまいります。
部活動の地域移行は、子どもたちにとって望ましい持続可能な環境の構築する観点に立ち、多様な形で最適に実施されるよう、意識調査を行い、指導者の確保、児童生徒・保護者への説明会や試験的先行実施などを進めてまいります。環境整備と併せて、教職員の働き方改革にもつながるよう、令和6年度も「改革推進期間」として位置付け、段階的な地域移行に取り組んでまいります。
また、地域社会で子どもたちを守り育てていくために、地域学校協働本部を設置し、学校運営協議会と地域学校協働本部会議を一体的に進め、「地域とともにある学校づくり」をより一層推進してまいります。さらに、登下校時の安全・安心を守るため、ふるさと応援寄附金を活用し、高校生や高齢者を対象とした1人2,000円の「自転車用ヘルメット購入補助事業」を新たに開始してまいります。
少子化・子育て対策の一環である結婚支援策の取組では、令和5年度に設立した、なめがた社会人サークル「チアフル」への加入促進を図るとともに、結婚に対する意識調査結果を基に、若い世代が将来展望を描けるような、ニーズに合った結婚支援策を講じてまいります。
地域医療について、本市においては医師確保を始めとする医療提供体制の維持・確保が大きな課題となっていることから、土浦協同病院なめがた地域医療センターを運営するJA茨城県厚生連と、昨年締結した「地域医療等に係る連携協力に関する協定」に基づき、本市とJA茨城県厚生連とが相互に連携協力を図りながら、持続可能な地域医療提供体制の確保と、市民の安全・安心の更なる向上を目指してまいります。
また、近年、加齢や疲労、ストレスなどにより免疫力が低下し、帯状疱疹を発症する方が増加しています。このことを受け、令和6年度から、50歳以上の方を対象に、帯状疱疹の予防接種に要する費用の一部を助成し、発症・重症化の予防と経済的負担の軽減を図ってまいります。このほか、これまで40歳以上を検査の対象としていた「脳ドック」の助成を、25歳・30歳・35歳時点での検査も対象とし、若いうちから健診を受ける習慣を身につけてもらうことで、未病・予防を図り、健やかな暮らしの実現につなげてまいります。
次に、「地域の賑わいと活性化に向けた取組」についてです。
本市は、令和4年4月1日に市全域が過疎地域の指定を受けましたが、本市の強みである地域資源を生かし、引き続き、地域の賑わいと活性化に向けた取組を推進してまいります。
現在、東関東自動車道水戸線(潮来-鉾田間)の整備が進められておりますが、地域の賑わい創出の有用性や、道路を介した地域連携の促進などの効果を鑑み、(仮称)行方パーキングエリア周辺に、高速道路・一般道路の双方から利用可能な地域振興施設の整備に向けた、基本計画と基本設計を進めてまいります。市内にインターチェンジが2か所設置されることから、本路線の開通を見据え、物流の効率化、農畜水産物の消費地拡大、企業誘致等の施策を推進することで、産業の振興と地域経済の活性化にもつなげてまいります。
学校跡地等の利活用では、現在進めている「遊休市有地活用可能性調査」の結果に基づき、企業誘致を含め、経済や財政効果が働くよう、本市にとって有効となる形で進めてまいります。
「霞ケ浦ふれあいランド再生整備事業」については、これまで、様々な外的要因により3度の延期を余儀なくされましたが、本年夏頃のリニューアルオープンに向け、駐車場の確保等と合わせて整備を進めてまいります。
ロケ誘致実績が急増しているフィルムコミッションについては、ロケ誘致の経済効果も大きいことから、交流人口や関係人口の創出、市民の郷土愛やシビックプライドの醸成を目的とし、引き続き、観光振興や地域の再生と活性化につながるよう、本市の魅力や利便性等の発信など、更なる取組を推進してまいります。
また、観光による地域活性化については、本市の魅力を体験できるキャンプ事業やサイクリング事業を始め、湖上花火大会を復活させるなど、地域のあらゆる資源を生かした交流を促進することで、ただ単に人を呼び込むのではなく、観光を通じて来訪者した方々の消費活動を盛んにするなど、まちづくりや地域再生にもつなげてまいります。さらに、本年4月にオープンを控える「行方市交流宿泊施設(ムービングハウス)」では、市民の皆様の憩いの場として、また、レクリェーションの創出や交流人口・関係人口の拡大につながるイベントの開催を検討してまいります。
基幹産業である「農業」については、農畜水産物のブランディングや6次産業化による付加価値の向上のみならず、生産性の向上に向けたICTやスマート農業の導入も求められていることから、これらの施策を組み合わせながら、新規就農の拡大や後継者の育成の取組を継続してまいります。特に、農畜水産物のブランド化を戦略的に展開し、知名度の向上と更なる価値の創出により地域経済の活性化を図るため、「サツマイモ」や「シラウオ」を中心としたブランディングを展開するとともに、更なる地域資源の掘り起こしや商品価値の向上にも努め、効果的なプロモーションやふるさと納税の返礼品としての活用、また、ECサイトでの販売などにより、生産者の所得向上につなげてまいります。
新庁舎整備については、「庁舎建設基本計画」に基づき、市議会や市民への説明を続けてまいりましたが、病院施設等の活用方法については多様な意見があること、また、庁舎建設基本計画で目標としていた、令和7年度までの供用開始が見込めない状況となったことから、現状の課題を整理し、基本計画の一部を見直すため、改めて「行方市庁舎建設市民会議」を招集し、早期に具体的な設計(基本設計)に入ることができるよう、進めてまいります。
自治体DXの取り組みについては、あらゆる分野において高付加価値を創出できる「デジタル技術」を活用することで、窓口サービス、防災対策、福祉医療などの市民サービスの向上とともに、市民、事業者、市職員の誰もが便利さや暮らしやすさを実感できるよう、効率的・効果的な新しい行政運営に取り組んでまいります。
特に、高齢化の進行により、外出や移動に不安を感じている方への行政サービスの提供が課題になっていることから、行政とモビリティの掛け合わせによる複合的な移動型行政サービスに実現に向けた「行政MaaS」への取組を進めてまいります。また、外出や移動が難しい交通弱者の方への対応として、現在実施している、市営路線バスを始め、乗合タクシー、移送サービス、福祉タクシー券の給付、買い物支援など、様々な事業の最適化を図るとともに、地域の移動手段を増やすことで住民の移動の課題を解決する「自治体ライドシェア」の導入に向けても検討を行ってまいります。
地域脱炭素に向けた取り組みについては、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、自治体でもグリーントランスフォーメーション(GX)の取組が求められています。これまで「行方市環境基本計画」、「行方市地域気候変動適応計画」、「行方市地球温暖化対策実行計画」に基づき、脱炭素を目指した取組を進めてまいりましたが、温室効果ガスの削減だけでは、国の長期目標を達成することは難しい状況にあります。そのため、温室効果ガスの削減と併せて、再生可能エネルギーの導入を進めていくため、令和5年度に「行方市再生可能エネルギービジョン」を策定しましたが、策定を契機とし、これまで以上に行政・事業者・市民が一体となった取組を加速させるために、ゼロカーボンシティを目指すことを宣言するとともに、地域マイクログリッドの導入といったカーボンニュートラルと地域振興を同時に解決する施策や、公共施設への太陽光発電設備の導入、ごみや廃棄物・バイオマスといった未利用資源の活用など、国の交付金等を活用しながら、本市が目指す地域脱炭素社会を推進してまいります。
常々申しておりますが、私の使命は、市民が暮らしやすさを実感し、本市に笑顔で「住みたい」「住み続けたい」と思えるようなまちをつくることであります。そのためには、所信表明で申し上げた「行方市の持続可能な未来」と「市民の皆様の幸せ」の実現に向けた施策を体系的に講じ、これまで以上にその効果に磨きをかけてまいらなければならないと、改めて思いを致しています。
約3年にも及ぶコロナ禍を経て、時代は新たなフェーズに入りました。この間、私たちは改めて、自分の考え方や価値観について問われることになり、社会や個々の価値観は大きく変化しました。これまで行政は、変化における良くない側面や、継続性や安定性に重きを置きがちで、どちらかと言えば変化を「良し」としないきらいがありましたが、コロナ禍で一変した市民や社会のニーズに対し、これを的確に捉え、柔軟かつ迅速に対応していくためには、これまでとは異なる思考で変化と向き合い、市民の皆様の声を丁寧に検証・分析することで、新たなイノベーションを生み出し、課題の解決策を導いていく必要があります。
新たな取組にはリスクがないとは言い切れず、予見の難しさはありますが、あらゆるリスクを想定しながら、市民の皆様の満足度を高める市政をつくり上げたい。その一心でありますので、歩みを止めることなく、これまで以上に情報の収集や財源の有効活用に努め、官民連携などの様々な経営資源を活用しながら、市民の皆様に実利ある施策を展開するとともに、施策の意義や効果を十分に発揮できるよう、市職員と一丸となって市民の皆様と協働し、市民の皆様のために挑戦することで、多くの世代から選ばれる、そして、将来に希望がもてるまちづくりにまい進してまいりますので、どうか市民の皆様並びに議員各位におかれましては、引き続き御理解と御協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
問い合わせ先
アンケート
行方市ホームページをより良いサイトにするために、皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。
なお、この欄からのご意見・ご感想には返信できませんのでご了承ください。
- 2024年10月9日
- 印刷する